新年明けましておめでとうございます。本年も大西矯正歯科クリニック並びにこのコラムを何卒よろしくお願い致します。
皆さんの中には、笑った時に上の歯茎が見えること(ガミースマイル)を悩んでおられる方も多いのではないかと思います。当院ではガミースマイルのご相談をよくお受けするのですが、最近、特に舌側矯正(リンガルブラケット矯正装置)でガミースマイルを治療したいというお問い合わせを多く頂きます。ガミースマイルを舌側矯正装置で治療できるかというと、残念ながら非常に困難と言わざるをえません。現状ではガミースマイルの治療は、歯の外側に装置を着ける必要があります。2016年初のコラムは、なぜ舌側矯正ではガミースマイルの治療が難しいのか、その理由についてご説明したいと思います。
以前のブログで、ガミースマイルの治療には、歯科矯正用アンカースクリューを使って上顎の前歯を持ち挙げる方法と外科矯正で上顎の骨ごと上に持ち挙げる方法があることをお話ししました。歯科矯正用アンカースクリューを使って前歯を持ち挙げる場合、歯の外側に装置がついていれば、歯茎に埋めた歯科矯正用アンカースクリューからの引っ張る力は、歯をほぼ真上に引っ張る方向にかかるため、効率的に歯を持ち挙げることができます。
しかし、歯の裏側に装置がついている場合、裏側の歯茎に歯科矯正用アンカースクリューを埋めても、歯茎の形が斜めになっているため、歯を引っ張る力は斜めにしかかからず、歯は上方向というよりもむしろ後ろ方向に引っ張られてしまいます。そのため、引っ張れば引っ張るほど前歯は後ろに動いてしまい、上に持ち挙がるどころか咬み合わせが悪くなってしまう可能性があります。舌側矯正(リンガルブラケット矯正装置)でガミースマイルを治療しようとすると、外側の歯茎に歯科矯正用アンカースクリューを埋めて、前歯の外側にボタンのようなものをつけて引っ張る必要があります。そうなると、もはや舌側矯正している意味はほとんどありませんので、現実的には無理ということになります。
では外科矯正はどうかというと、舌側矯正装置(リンガルブラケット矯正装置)で外科矯正するのも非常に困難です。通常の外科矯正は健康保険が適応されますが、舌側矯正装置では保険適応でなくなるため、治療費が非常に高額になってしまいます。もし仮に治療費はいくらかかってもいいので、舌側矯正装置で外科矯正をするといった場合でも、治療は非常に困難です。というのは、手術後には咬み合わせがずれないように、上下の歯の間にゴムをかけて一日中過ごしていただく必要があるのですが、裏側に装置がついていると指が入らないので、このゴムかけができなくなってしまいます。そのため、手術時には歯の外側に装置が着いている必要があり、舌側矯正装置で外科矯正をすべて行うことはできません。手術の時のみ外側に装置を着けるということをすれば不可能ではありませんが、舌側矯正装置で外科矯正するのは現実的には非常に厳しいと言わざるをえません。
このようにガミースマイルの治療のためには、どうしても歯の外側に装置を着ける必要があります。舌側の矯正装置は、通常の唇側の装置に比べ、治療の限界がどうしても存在します。歯の外側に装置を着けることに抵抗のある方もおられるかと思いますが、ご理解いただきますようお願いいたします。
2016月01月15日
院長 大西 秀威