以前のコラムでガミースマイルの治療法には、歯科矯正用アンカースクリューを使用する方法と外科矯正をする方法があることをご紹介いたしました。歯科矯正用アンカースクリューを使用する方法では、上の前歯を持ち上げられる量に限度があるため、ガミースマイルの改善量は3mm程度が限界であることを説明いたしました。3mm以上歯茎を持ち上げる必要がある場合には、外科矯正が必要になります。今回は外科矯正でどれくらいガミースマイルが改善されるのかについてお話したいと思います。
外科矯正でガミースマイルを治療する場合は、上下両方の顎を手術する必要があります。具体的にどのようにするかというと、「外科的矯正治療」のページの「顎偏位症の手術」と同様に、手術で上顎を骨を一旦切り離し、ガミースマイルの改善に必要な量だけ上顎の骨を削って、上に持ち上げた状態で固定します。その後、下顎の骨も左右で一旦切り離し、上顎の位置に合わせてきっちりと咬み合う場所で固定します。
上記の写真は、ともに外科矯正でガミースマイルを治療した患者さんの治療前後の写真です。上2枚はガミースマイルを主訴として来院された患者さんで、歯科矯正用アンカースクリューではガミースマイルの改善は困難と判断し、外科矯正で治療することとなりました。手術では上顎を約5mm持ち上げました。治療後には、笑った時に歯茎が見えなくなり、非常に美しいスマイルになっています。
下2枚は元々は上顎前突(出っ歯)の治療に外科矯正が必要と診断した患者さんで、ガミースマイルも気になるとのことでしたので、咬み合わせの治療と合わせてガミースマイルも治療することになりました。この患者さんの場合、できるだけ上顎を上に持ち上げて欲しいとのご希望がありましたので、約7mm持ち上げています。治療後には、笑った時に上の前歯がやや隠れるほどに改善されました。
以前のコラムでもお話しましたが、ガミースマイルというのは病気ではないので、それによって機能的に何か問題が起こるというものではありません。あくまで見た目、審美性の問題ですので、どれぐらい歯茎が見える状態が正常という決まった基準があるわけでもありません。好みの問題もありますので一慨には言えませんが、一般的には笑った時に前歯の歯と歯茎の境目あたりに上唇がくるか、歯茎が1mmぐらい見える状態が、笑顔が一番魅力的に見えると思います。
では手術でどれぐらい上顎を動かすことができるかというと、持ち上げる量としては7~8mmぐらいが限界です。それ以上に持ち上げる必要があることは、まずないでしょう。あまり上顎を持ち上げすぎると、笑った時にやや老け顔に見える可能性があるので注意が必要です。
このように外科矯正をした方が、歯科矯正用アンカースクリューを使って治療するより、ダイナミックにガミースマイルを改善することが可能です。どれぐらい歯茎が見えるのが適正かという基準がないだけに、どれぐらい上顎を移動させるのがいいのかは、慎重に決める必要があります。当院では大阪大学歯学附属病院口腔外科と連携し、患者さんのご要望を加味して、綿密に治療プランを立案します。ガミースマイルでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
2014月08月11日
院長 大西 秀威