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院長が日々診療するうちに思う雑感を記す矯正コラムです。

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矯正治療には患者さんの協力が不可欠です!

顎間ゴムエラスティック

矯正装置をつければ、自然と歯並びや咬み合わせがよくなると思われる方がおられるかもしれません。そうなれば治療としては理想的なのですが、なかなかそういうわけにはいきません。治療を成功させるには、患者さんの協力が必要不可欠なのです。

矯正装置には患者さんご自身で取り外しできるタイプの装置と取り外しできない固定式の装置があります。固定式の装置は、患者さんご自身では取り外しできませんが、装置をつければ自然と歯並びが変わっていきます。それに対して取り外しできるタイプの装置は、患者さんに頑張って装置をつけて頂かないと効果がでてきません。矯正治療が当初の予定より長引いたり、治療結果が上手くいかない原因の多くは、こうした取り外しできる装置への患者さんの協力が得られないことにあります。

代表的な矯正装置であるマルチブラケット装置(クリッピーCなど)やリンガルブラケット矯正装置は固定式で、医院で装置を調整することにより、患者さんは何もしなくても、歯並びは自然に綺麗に並んできます。歯並びはどんどん綺麗になっていきますが、それに合わせて咬み合わせも自然に良くなっていくかというと、必ずしもそういうわけではありません。

例えば奥歯の咬み合わせが合っていない場合であれば、合うように歯を調整していかなければいけませんし、元々奥歯の咬み合わせが合っている場合でも、その咬み合わせがずれないように矯正治療を進めていく必要があります。咬み合わせは上下の歯からできています。どのようにして咬み合わせを調整するかというと、上下の歯の間に矯正用の小さな輪ゴムを患者さんご自身でかけていただいて、歯を移動させたり、咬み合わせを緊密にします。この上下にかけていただくゴムのことを専門的には顎間(がっかん)ゴムといいます。

顎間ゴムは主に治療の中盤から終盤にかけて使用しますが、基本的にはどんな症例でも必ずつけていただくことになります。顎間ゴムは原則的には食事やブラッシング以外の時間に1日中つけていただきます。食事やブラッシングの時に、患者さんご自身でゴムをはずして、その後新しいゴムをまたご自身でかけていただきます。もちろん仕事や勉強などで1日中つけることができないこともあると思いますが、最低限1日に12時間以上はつけていただかないと効果は限られてきます。

顎間ゴムをよく使うのは、例えば元々前歯がでているケースで前歯を引っ込める治療をする場合や、外科矯正のケースで手術後の咬み合わせがずれないようにかけていただく場合、治療の終盤で上下の咬み合わせを緊密にしようとする場合などです。顎間ゴムへの患者さんの協力が得られないと、せっかく矯正治療したのに前歯があまり引っ込まなかったり、咬み合わせのズレが残ってしまって、咬み合わせが完全には合わなかったりすることになります。矯正装置や技術の発達により、以前に比べれば患者さんの協力を必要としない装置が増えつつありますが、最終的に上下の歯を緊密に咬み合わせようとすると、顎間ゴムがどうしても必要になってきます。逆にいうと、治療の成功の鍵を顎間ゴムが握っていると言っても過言ではありません。

顎間ゴムをかけていると、しゃべりづらかったり、笑ったときにゴムが見えたりするので、日中はあまりつけられないと言われる患者さんもおられます。しかし、顎間ゴムを頑張っておられる患者さんとそうじゃない患者さんでは、治療スピードや最終的な仕上がりがまったく変わってきます。本当に驚くほどです!

顎間ゴムは確かに面倒で、見た目にもいまいちですが、頑張っていただければ頑張っていただくほど、治療が早く進み、仕上がりもよくなります。矯正治療を受けられる方は、顎間ゴムをぜひ頑張っていただきたいと思います。

2013月06月09日

院長 大西 秀威