大人の方を矯正治療する場合、マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置(インビザライン)などの装置を使用して、おおむね2~3年の年月をかけて一気に治療を進めます。しかし、小学生などの子供さんを治療する場合は、1期、2期と分けて治療する場合がほとんどです。1期と2期の間には治療を休憩する期間を挟むことが多く、最初から最後までの全体の治療期間が10年近くになる場合も少なくありません。子供さんの治療する場合、なぜ2段階に分けて治療するのかについてお話したいと思います。
「子供の矯正治療はいつぐらいから始めたらいいですか?」と質問をよくお受けするのですが、私は小学2~3年生ぐらいが一番いいですよとお答えしています。それはなぜかというと、今後旺盛な成長が期待できること、前歯と奥歯に永久歯が萌えていて装置が付けやすいこと、第一大臼歯というしっかりした永久歯に装置を着けることができるので効果が出やすいこと、患者さん本人に治療に対する自覚が出てくるので協力を得やすいこと、歯並びが悪くなるような癖、呼吸の問題などを改善することにより、不正咬合がより悪くなることを防ぐことができることなどです。
小学2~3年生では、第一大臼歯や永久歯の前歯は萌えていますが、まだ多くの乳歯が残っていて、乳歯と永久歯が混ざって萌えている状態です。この時期を混合歯列期と言います。混合歯列期に治療をスタートすると、治療中に乳歯は永久歯に萌え変わっていきます。乳歯をいくら厳密にコントロールしても、すぐに萌え変わって歯並びは変わっていってしまうので、子供さんの治療では、厳密な咬み合わせの治療は行いませんし出来ません。
子供さんの治療では、将来的に永久歯に萌え変わった時に問題なく歯が並ぶように隙間を確保したり、奥歯のズレを整えたり、骨格的な問題を改善したりと言わば土台を作る治療を行います。土台ができた後はしばらく治療を休憩して永久歯が萌え揃うまで待ちます。永久歯が萌え揃った段階で、次の段階の治療(2期治療)に進みます。2期治療ではすべての永久歯を精密にコントロールして、最終的な咬み合わせを作っていきます。
子供さんの治療では2段階に分けて治療を行うため、大人の方が治療するより治療期間が長くなってしまいます。しかし、成長をコントロールできるため、無理なく理想的な骨格や歯並びにより近づけていくことができます。治療期間は長くなりますが、子供の時期から治療を行うメリットをよくご理解いただきたいと思います。
2017月11月30日
院長 大西 秀威